レースメーカー

  • 制作1926年
  • サイズ44cm×40cm
  • 所蔵ワシントンナショナルギャラリー

現在はワシントンナショナルギャラリーに所蔵されている、「もう1枚の」レースメーカー。
90年前にはフェルメール作品と認定されていました。
それゆえルーブルにある「レースメーカー」は「小レースメーカー」と呼ばれていました。
当時の評価は「あまり出来の良くないフェルメール作品」だったそうです。
これは1921年から10年間もアメリカ合衆国財務長官を務めた銀行家アンドリューウイリアムメロンが、購入して、ナショナルギャラリーに寄贈した2点のうちの1点です。

日本でのフェルメール関係の書籍には、この作品のことは、ほとんど触れられていません。
日本ではメーヘレンに関する研究本がフランク・ウェインの「私はフェルメール」(改題フェルメールになれなかった男)しか翻訳されておらず、そこに、この作品が触れられていないからかも知れません。
それは、この作品が修復画家でメーヘレンの描いた贋作の画商を担当していたテオ・ファン・ウェインハールデンが描いたもの説が強かった時期があるせいでしょう。
現在では、ウェインハールデンは、メーヘレンの描いたものに古色を付けたのみと考えられてます。
実際、ウェインハールデンの作品も何点か見ましたがデッサン力が弱く、この作品も含めてメーヘレンの方が作品に力があります。

メーヘレンがウェインハールデンに依頼されて初めて贋作に手を染めるのは1923年のフランス・ハルスからとされているので、その後に次のターゲットとして、まだ研究が始まったばかりであった「忘れられた巨匠フェルメール」を題材にしてみよう。と考えたのは正しい選択と思える。
この作品が「フェルメールの新作発見!」と話題になるのは2009年にアメリカで発行された、ジョナサン・ロペスによる「TheMan Who Made Vermeers: Unvarnishing the Legend of Master Forger Han van Meegeren 」(現在は2020・11月n全米公開されたソニーピクチャーズの「the last vermeer」に改題されて再版されています)の表紙に使用されてからのように思います。

ジョナサン・ロペスは、この「レースメーカー」は女性の顔が現代的すぎるように思える。と指摘していますが、管理人は、この女性の顔は「真珠の耳飾りの少女」もしくは「中断された音楽の稽古」をモデルにしているのではないか?と思います。
贋作説を唱える研究者の多くは、「弱い」「空虚な」という表現をしていますが。
作品として見た場合の収まりは美しく、大人に近づいて大輪の花を咲かせようとしている少女に初々しさが描かれた上品な小品と感じられます。